長年ソフトウェアビジネスに携わってきて感じることは、アメリカの製品品質と日本の製品品質の違いに関して大きな差があることである。結論から見ると一長一短であることであり、どちらに軍配を上げるかは難しい。このような切り出しで始めると何を言及しているのかわからないであろうから、具体的に今まで経験した話題を例として揚げながら説明していこう。

面白い例としてソフトのプルダウンメニューに関する日米の違いについて。一般的にソフトの製品にはプルダウンメニューが提供される。ある米国の製品の品質テストを実施している時に、プルダウンメニューのあるコマンドをマウスで選択しても何も反応がないケースがあった。当然これは不具合として米国の会社に連絡し改善を要求した。ところが帰ってきた返答が「It’s by design」、つまり「仕様どおり」というのである。


何を馬鹿げたことを言っているのか?何の動作もしないコマンドに対して、それが「仕様どおり」とは何事か?と怒ったものである。更に説明を要求すると、それは製品とリリースして顧客からそのコマンドに対して質問があったときに、その顧客にそのコマンドがあれば便利かどうか尋ねるというのである。つまりある意味、何の動作もしないメニューコマンドを設けることにより、顧客からの反応を見てその中身を開発するかどうか判断する一つのマーケティングツールとして使っているのである。

お金を払ったユーザーにマーケティングの手伝いをさせるとは何事だとおもわれるだろう。しかし、ある意味実践に適ったマーケティング手法かもしれない。もちろん日本では考えられないことだが。

所謂、痒いところに手が届く配慮が日本の製品にはされているし、また必要である。これは日本のもの作り精神に起因するところが大きい。それに引き換え、アメリカの製品は使用者側に立った合理的考えに基づいた製品作りといえる。両国の違いを単にこれで片付けられるのであろうか?