セカンドライフで提供できる情報の特質については前回の記事でまとめたが、それではどんな活用法をしていけばよいのか。今回はセカンドライフを現実社会にある企業がマーケティングの道具として使うという場合について考えてみたい。まずはセカンドラフの良い点を活かす方法だ。

〜3Dの経験を最大限に〜

セカンドライフはベタ絵に限られているとは3D経験を提供できることが、最大のメリット。この点でSLで企業が出している普通のビルボードとか掲示板、流しているビデオクリップなどはあまり意味がない気がする。登録人口が5百万人を超えたとは言え、その中で日常的にログインしているのは30%の170万人程度、つまり日本の地方都市程度の人口で、おまけにけっこう広いゲーム内でそれらが目にとまる確率はさらに低くなる。つまり、ブランディングが目的であればホームページやブログのほうがよっぽどコスト効率がよいし、テレビのほうがよっぽど画像がきれいでリーチできる人口が多い。
しかし、3Dだからこそ説得力のあるマーケティングができるというのであれば、たとえマーケティングできる母体が小さくても意味があると。そういう点では新しいホテルチェーンをSL内で紹介したStarwood Hotelなどは評価されるべきだろう。実際に部屋に入ったときの経験を提供できるからだ。同じような応用ではレストラン、宴会場、住宅展示場、建築デザインなど空間を売るビジネスが考えられる。

また私は思いつかなかったが今日のC−NETの記事に出ていたセシールなどかもかなり良いアイディアかもしれない。下着はけっこう3Dのアピールが大切かなと思うからだ。きっとまだまだ他にも3Dだからこその経験活用がたくさんあると思う。これがどのくらい思いつけるかがSLビジネスの成功のひとつの鍵ではないだろうか。

〜同期コミュニケーション

そして、セカンドライフ内ではチャットとVoIPができる。つまりお客さまと直接話ができるわけだ。実はアメリカでは企業ホームページでもこれができる仕組みのあるサイトがけっこうあるのだが、これは顧客のニーズをその場で把握してセールスに結べつけることに大変役立つはずだ。つまり現実社会の営業担当者や売り子さんのようなことができるということ。しかし、セカンドライフはゲームという感覚があるからか、ほとんどの企業がSLにショールームのようなものは作ってみたものの常時誰かをそこで働かせることにはまだ抵抗があるようだ。そしてどうもお店のガラガラ状態はこれが原因のようで、誰も相手をしてくれない店に行ってもしかたがないと思うアバターが多いようだ。SLでまともにお金を稼いでいると言われている個人業者は少なくとも週に40時間、実際にはもっとSLに張り付いているようだから、企業もそれくらいの覚悟は必要ということだ。逆に言うと、そういう営業やセールスがなければ販売しにくく、しかも単価が高いものはここで売ったほうがよいということになる。

〜場作り〜そして、お店やオフィスの中や外の雰囲気、集まっている人たちの様子、話の内容、そんな総合的な場の提供による暗黙知の体験、これはセカンドライフだからこそできることだと思う。そういう点では学びの場を提供する学校の参入(ハーバード大学など)は理解できる。なぜならそもそも学校というものができたのは、他の人と一緒に学ぶ場のメリットがあったからだ。SLでコンサートを行うミュージシャンなどはこの場作りを活用していると言えるだろう。交流パーティー、フェスティバルやコンファレンスなんかもこういう場作りを活用できるはずだ。

こうして想像力を鍛えてアイディアを出していくことでセカンドライフの可能性はどんどん広がる。しかし、現在のセカンドライフにはサービスや製品の検索ができない、大衆にアピールができないという限界がある。次回はそうしたことの解決策を探りたいと思う。(次回に続く)