EntelliumというSaaSCRM提供会社は、SaaS型のCRMではけっこう高い評価を受けていて、シアトルベースのベンチャー企業の中では言ってみればスター的な存在の会社のひとつだった。しかし、11月になってEntelliumは、CEOとCFOが突然、会社を退任、どうしたのかと思っていたら、なんとこの二人は詐欺罪で捕まってしまった。

二人は収益を大幅に偽っていたのがその理由あるが、この偽り方が半端ではない。なんと実際の収益の4倍。そしてその財務報告をもとに5千万ドルもの融資をベンチャーから受けていたのである。どうしてこんなことになったのか、その理由を知りたくていろいろ書かれていることを読んでみると、そこにはSaaSのビジネスの落とし穴みたいなものが見えてきた。
EnterilliumはSalesforce.comと同じようなSaaS型のCRMSalesforce.comより安価に提供していて、営業やマーケティングのスタッフを増やして、積極的な展開をしかけていた。提供サービス製品は悪くはなかったようで、いろいろ検討をしてEntelliumに決めたという企業も多かったようだ。ところが、実際に顧客となってみると、それまでに使っていたソフトからのデータ移行がうまくいかない、他のソフトとの統合がうまくいかないなどの問題が起こった。そして、Enterilliumは、どうもそれらびサポートの提供が今ひとつできなかったようなのである。これはもともとEnterilliumがマレーシアの安価なエンジニア力を活用していたことにもひとつの原因があったのかもしれない。

その結果、顧客がサービスを継続しないという事態が生じたようで、顧客の継続率は一部では25%ぐらいだったとも言われている。こうして考えてみると、SaaSは容易にはじめやすいサービスであるが、顧客からすれば容易に切ることができるサービスでもある。また当たり前であるが、サービス提供なのだから顧客に質の良いサービス提供をし続けなければならない。そうでなければ一度見込んだ収入も次の年には得られなくなってしまうということで、収益の虚偽報告も実はこのあたりから来ているのではないかと思う。

そして、忘れてはならないのが、このビジネスに投資していたベンチャーキャピタルの存在。キャピタルも騙されていたといえばそれまでだが、ビジネスがどのように行われているかしっかり監査もしていなかったことも明らか。景気の良いときは、問題にならなかった投資もこう不況になってくると黒白がはっきりさせられてくるのだろう。結局Enterilliumは破綻、現在はアプリケーションの売り手を探しているらしい。これからしばらく、どうもこういう話が増えてきそうな今日この頃です。