これだけIT技術が進んだ現在、多国籍企業、つまり世界をまたにかけてビジネスをする企業はこれまでになく増えていくだろう。トーマス・フリードマンの著書「「フラット化する世界」は、ITインフラやそのほかの要因が世界をフラット、つまりグローバルな競争社会にしてきた過程を説明し、実例をたくさんあげている。その例のひとつとしてあがっていたのは、ウォールマート、世界最大の独自のサプライチェーンは情報システム投資に裏づけられている。

しかし、いくらインフラがあっても、文化の違う国でビジネスをすることは容易なこてではない。実際、弊社のような海外ビジネスを柱とする会社では、これは日常のジレンマ。そんな中、先週行ったセミナーのCOSTCOの国際ビジネス担当、副社長のプレゼンは、学ぶことが多かった。

COSTCOは日本にすでに5店舗あるので、知っている方も多いかもしれないが、会員制の卸売りスーパー。 写真のように倉庫のような店内には野菜から宝石、パソコンまでが格安価格で売られている。ただし、卸売りという前提なので、食料品などは、かなりの量を一度に買わなければならない。しかし、全世界で4千8百万人の会員を持つ会社、さすがと思わせることがたくさんあった。 


まずCOSTCOという会社は、かなりグローバル展開をしているとは知っていたが、500店舗のうち100店舗以上が海外にあり、これからさらに増やしていくと言うことを聞いて驚いた。また、ウォールマート同様に独自のサプライチェーンを持っていて、例えば日本茶は日本で直接仕入れ世界中の店舗で売られているということ。どおりで、日本ではアメリカの日常品が、アメリカでも日本製品が格安で手に入れることができたはずだ。また、低価格化を図るためにマイクロソフトやディズニーなどとも仲介業者を全く通さずに直接ビジネスをしているということだった。つまり製品は国境や企業のサプライチェーンを超えて売られていくのだ。


しかし、このプレゼンで何よりも一番驚いたのは、同社の日本市場の知識である。関税から食管法までよくここまで調べ上げたと思うほど詳しかった。日本の検査機関からパンケーキミックスに入っているはずではない漂白剤が混じっていると指摘されて、それを解決する過程が説明されたが、その解決までの周到さにもとても驚いた。


さて、そんなCOSTCOのグローバル化の秘密はどこにあるのか。プレゼンにはそのヒントがいくつかあった。まずはその志。低価格でサービスや製品を良心的に提供したい、従業員、社会にも貢献したい。こうしたはっきりとこうした志がエネルギーとして感じられ、企業にこれがどんなに大切であるのかを改めて思った。なぜなら、そうした志こそが、難しい国際ビジネスをあきらめずに成功させていった鍵だと思うからだ。そして、、ビジネスのプロセスの中で大切なこととして、教育とコミュニケーションがあげられたこと。 ITインフラがいくらあっても、他の人から学ぼうという姿勢、他の人とコミュニケーションして知識を共有しようという姿勢がなければ、何にもならないということだ。海外とのビジネスなら、これはなおさらのことだし、WEB2.0もこれがなければ意味がない。


このCOSTCOはシアトルのイーストサイド、イサクアに本社がある。ここは自宅から近い場所。(以前に書いた鮭の川のぼりの街)で、はっきり言えば田舎っぽいアメリカ郊外。そんなところにこんなグローバルな会社がある。これこそが、フリードマンの言うところ、世界のフラット化に他ならないだろう。